目指したのは、ひとも食べられるペットフード。
ペットをわが子同然に愛する気持ちから
人間基準のペットフードが生まれた

飼い主さんの想いを大切にした「正直」な商品づくりをモットーとするペットフードメーカー、株式会社アニマル・ワン。福岡県久留米市にある同社は、原材料を100%開示し、地元・九州産を中心とした厳選された国内産の原料を使って、家族同然の存在であるペットたちの健康を考えた製品づくりを行っています。目指したのは、ひとも食べられるペットフード。ペットの健康を妨げる添加物を使用しないことはもちろん、素材本来の風味豊かなおいしさをペットにも味わってもらおうと、製品には余計な香りや色、味付けせず、動物性の油脂を使ったオイルコーティングも行いません。
今回ご紹介するのは、プレミアムフードのカテゴリーで、近年その存在感を増し続けているペットフード「犬の雑穀ごはん」。これまでと同じこだわりに加え、最近増えてきている小麦アレルギーのペットにも安心の小麦粉フリー(小麦グルテンフリー)です。同品誕生の経緯や開発秘話を、株式会社アニマル・ワン社長の菰方 順子さんにお聞きしました。

社長の菰方 順子さん(中央)は、2000年に短期アルバイトの経理職として親会社のベストアメニティに入社。その後、子会社である株式会社アニマル・ワンに異動となり、当時はまだ商品ラインナップにはなかったドライタイプのプレミアムペットフードの開発に成功する。現在は、営業企画・商品開発マネージャーの小田良枝さん(左)、リーダーの海蔵寺美沙さん(右)とともに、経営の傍ら商品開発を手掛ける。

手作り食で愛犬の皮膚炎がみるみる回復

「犬の雑穀ごはん」をはじめとするアニマル・ワンのペットフードが、なくてはならない商品として、これほどまでに多くのペットの飼い主から支持されるまでに成長した背景には、1匹のミニチュア・ダックスフンドの存在がある。それは、創業者である内田 弘さんがかわいがっていた今は亡き愛犬の「うるめ」だ。量販店に売られているペットフードを食べていたうるめは、ある頃から皮膚炎に悩まされるようになる。
「ちょうどそんな頃、創業者である内田のもとにある営業マンがペットフードの営業に訪れました。その営業マンの持ち込んだペットフードを何気なく内田が口にしようとした瞬間、『食べたら駄目ですよ!ペットフードですから!』と止められたことがあったんです。そのときに、内田は『人間が食べられないものをわが子同然に可愛がっているペットに与えていいのか』という疑問を持つようになったそうです」。

多くの人の健康に貢献できる食生活を届けていきたいと1990年にアニマル・ワンの親会社であるベストアメニティ株式会社を設立した内田 弘さん(現・ベストアメニティグループ代表)と愛犬の「うるめ」。うるめの皮膚病をきっかけとして、おいしく安全なペットフードの開発を決意する。


水分を含むジャーキーが、梅雨時期で封を開けているにも関わらず、何週間たってもカビが生えない。色や香りの変化すらない。ひょっとすると市販のペットフードにはたくさんの添加物が使われているからではないのか。愛犬の皮膚病も、もしかしたらこれが原因なのかもしれない・・・。
そう考えた内田さんは、市販のペットフードをやめ、愛犬に自社で生産する雑穀米を使った手作り食を与えるようになる。体の小さいペットは、ダメージを受けるのが早い反面、改善するのも早い。手作り食を与え始めてからわずか数日で皮膚炎がみるみるうちに良くなり、しばらくすると無事に完治した。しかし、忙しさのため手作り食を一時中断して市販のペットフードに戻したところ、皮膚トラブルが再発。
「手作り食であって、なおかつ、簡単に与えることのできるものを作りたい」と思い立った内田さんは、安心して食べられるペットフードの開発に取り組むことを決意し、1999年アニマル・ワンを創業した。

「内田は、アニマル・ワンの親会社であるベストアメニティ株式会社の創業者でもありました。ベストアメニティは複数の穀物をブレンドした『雑穀米』を日本ではじめて商品化した会社です。内田はその知識を活用し、何度も何度も試行錯誤を重ね、開発に取り組みました。大切な家族が毎日口にするものだからこそ安心できる素材選びを第一に考え、国内産の減農薬や無農薬を中心とした雑穀と野菜を使用することにしました。そして完成したのが、レトルトタイプのペットフード『玄太の玄米ごはん』です。これを食べ始めたうるめは、すっかり皮膚トラブルがなくなり、その後も再発することはなく、毛づやは以前よりも良くなったそうです」。

株式会社アニマル・ワンは、福岡県久留米市にあるベストアメニティグループの本社ビルの中にある。社長の菰方さんを含め、わずか6名の少数精鋭の女性スタッフで運営。

かけがえのない家族であるペットの食事も人間と同じ基準であるべき

「人も食べられるペットフード」をコンセプトに、高品質で栄養価の高いペットフードを次々と発売しているアニマル・ワンの現在の主力商品が「犬の雑穀ごはん」だ。無香料・無着色・保存料不使用というこれまでと同様のこだわりに加え、近年増加している小麦アレルギーのペットにも安心して食べてもらえるように小麦粉不使用(小麦グルテンフリー)とした。主原料の鶏肉は地元・九州産100%、小麦の代わりに大麦や黒米などの栄養豊富な雑穀を贅沢に使用し、ビタミン・ミネラルを含む国産の野菜や、風味豊かな国産のかつお粉をブレンドしている。

「犬の雑穀ごはん(チキン)」成犬用(左)とライト&シニア犬用(右)。いずれも価格は、800g 1,200円(税抜)、1.6kg 2,100円(税抜)。普段の主食としてはもちろんのこと、手作り食中心の愛犬の栄養補助食にもぴったり。

 
「犬の雑穀ごはん」を含む同社のドライタイプのペットフードには、一般的なペットフードの仕上げ方法である動物性油脂の吹きかけ(オイルコーティング)を行っていないことも大きな特徴だ。製造の最終工程で、人工的な香料などで風味付けされたオイルを粒にコーティングすれば、確かにペットの食いつきはよくなる。しかし、コーティングされたオイルの酸化を防ぐために、毒性の強い添加物である酸化防止剤が必要となってしまう。
「犬は嗅覚がすぐれているため、美味しそうな香りのするフレーバーを付けさえすればフードを食べてしまいます。香りでごまかしたり、食いつきをよくするためだけにペットの健康を害する可能性のある添加物を加えたりすることは私たちにはできません。素材が持つ自然な風味を最大限に引き出して、ペットがおいしいと感じる食事を提供すること、それによってペットが健康で長生きできるようサポートすることが私たちのモットーだからです」。

シンプルなネーミングと手に取りたくなるパッケージデザインが成功の重要なファクター

「犬の雑穀ごはん」が誕生する前に、同社にはドライタイプの「マザープラス」というプレミアムドッグフードがすでに存在していた。しかし、これよりももっとわかりやすく、消費者の手に取ってもらいやすい価格帯の商品として開発されたのが、今回紹介する「犬の雑穀ごはん」だ。
「まず、商品のネーミングにあたっては、犬用なのか猫用なのかウサギ用なのか、“誰”向けなのかをはっきりしようということを念頭にアイデアを出しました。また、弊社は、雑穀米を日本で初めて商品化した会社なので『雑穀』というキーワードは絶対に入れたかった。そうして決まったのが、『犬の雑穀ごはん』というシンプルな名前でした。“フード”ではなく、日本の食卓をイメージさせる“ごはん”という言葉をあえて使ったのも、“エサ”ではなく“食事”を届けたいという想いがあったから。国産原料を使用していることが容易に想像できるネーミングであり、これによってお客様に商品への理解を深めていただけたと思います」。

「犬の雑穀ごはん」というネーミングに合わせて、フードの形も米粒に。原料を結着させる小麦粉を使わずに水分の多い生肉を使用してドライフード化させる技術を確立するのに3年かかったという。

 
商品は、中身や品質が重要であることはもちろんだが、売れるかどうかは、商品の入っているパッケージに左右されることもある。どんなに中身が良くても、消費者の目につかなければ、商品の魅力が伝わらず手に取ってもらえないからだ。さまざまな商品パッケージが並ぶ中で、消費者が手に取るかどうかを考える時間はわずか3秒。その間に目に留まらなければ、手に取ってもらうことはできないと菰方さんは言う。
「今回、『犬の雑穀ごはん』というシンプルな商品名を、だれが見てもすぐに読める大きな文字で打ち出したことで、多くの方に手に取っていただけるようになりました。パッケージに魅かれて買う、いわゆる『パケ買い』のお客様も増えました。これは、パッケージデザインを担当した営業企画・商品開発マネージャーの小田の功績です。また、当社では、コストがかかっても中身の品質を維持するために、一般的なペットフードによくあるクラフト紙製の袋を使用せず、アルミ製のチャック付き袋を使用していますが、よく見ていただくとわかる通り、『犬の雑穀ごはん』には、お茶などのパッケージによく見られるマットな質感のアルミパッケージを採用しています。ペットフードのパッケージで、このマットな質感のアルミ素材を採用したのは当社がはじめて。小田が包材メーカーに何度も掛け合って実現させた苦心と努力の結晶でもあります」。

パッケージデザインにあたっては、「ペットを思いやるやさしさ」をキーワードにしたという営業企画・商品開発マネージャーの小田良枝さん。こだわりぬいてデザインしたパッケージは、しっとりとした質感と手触り感、落ち着いた雰囲気に仕上がっている。

ペットフード業界の常識に「NO」の声を!

ペットフードに関しては、諸外国に比べ大きく後れをとっている日本。人間の食べ物になる牛や豚、鶏などの家畜に関しては「飼料安全法」という法律があり、エサとなる飼料の品質が確保されているが、片や、犬や猫が食べるペットフードは、「食品」ではなく「雑貨」という商品カテゴリーで扱われているのが実情だ。ペットフードに関する法や基準がきちんと整備されていないということは、「人間が食べられない」粗悪なペットフードが流通し続けることを意味する。
「格安で販売されているペットフードは当然のことながらペット専用となっており、人間が口にすることは禁止されています。その理由をご存知でしょうか。人間の食品基準に不合格になった危険な原材料や毒性の高い添加物を使用していることがあるからです。危険な原材料の代表的なものが、『4Dミート』と呼ばれるもの。『Dead(死んだ)』、『Dying(死にかけの)』、『Diseased(病気の)』、『Disabled(負傷した)』動物の肉のことです。安価なペットフードには、本来は廃棄されるべきものや人間が食べない畜肉副産物(正肉以外の部位)まで混ぜてつくられていることはペット業界の常識であり、決して珍しいことではありません」。
年々、アトピーやアレルギー、成人病やガンなどの病気にかかるペットたちが増加してきたのは、こうしたことが関係しているのではないかと推測されている。

2009年にペットフードの安全確保を目的とした「ペットフード安全法」(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)が制定され、有害な物質を含むペットフード等の製造、輸入又は販売が法律で禁止されるようになった。現在では、国内で流通するペットフードには添加物や成分に関する一定の安全基準が設けられ、添加物を含むすべての原材料名をパッケージに表示する義務が課せられている。
「このペットフード安全法が施行されるまでは、ペットフードの安全性・品質を規制する法律が一切ありませんでした。フードに添加物が含まれていても20%までなら『無添加』と表示してもよかったのです。私たちは知らず知らずのうちに大切なペットに危険なフードを与え、うるめのように健康を損なわせてしまうことも多かったのではないかと思います」。

「親はわが子に無償の愛情をもって食事を与えます。それはペットに対しても同じ。人間が食べられないような原材料でつくられたペットフードを家族の一員である大切なペットに与えられるでしょうか」と菰方さん。

 
「ペットフード安全法」はあくまでも最低限の基準であり、日本のペットフード業界はまだまだ立ち遅れている。ペットフードの安全性はそれぞれの事業者の自主性にゆだねられているのが現状なのだと菰方さんは訴える。
「創業以来、弊社が人間も食べられるペットフードをつくり続けているのには、日本中、世界中のペットフードから添加物を減らすきっかけになりたいとの想いがあるからです。ペットフード安全法によって有害な物質を含むペットフードは規制の対象となりましたが、日本にはペットフードの栄養基準に関する法律や基準が存在しません。指標としては、米国飼料検査官協会(AAFCO)が定めた栄養基準がペットフードの世界的なスタンダードとなっており、日本のペットフード公正取引協議会もAAFCOの栄養基準を採用しています。しかし、私たちはこれも不十分であると考えています。なぜなら、広大な庭や広い室内スペースがあるアメリカの飼育環境とは大きく異なり、狭い家の中で飼われている日本の犬はどうしても運動量は少なくなりがち。生活スタイルや飼育環境を考慮したペットフードの栄養基準が必要です。日本独自のペットの栄養基準や安全基準をつくっていくこと、これこそが私たちの目標です」。

「犬の雑穀ごはん」の成功から新たな展開を模索

ペット業界は、生体販売やトリミングも含めて1兆円の市場規模をもつ業界である。その中でプレミアムフードが占める市場はわずか176億円。ペット業界のほんの一部に過ぎない。そんな中、アニマル・ワンは、ここ4~5年、前年の売上高を150%前後で更新し続けている。本来はそれ以上に売上高を更新できるほどに需要はあるのだが、肝心の生産が追い付かないという苦境にある。
「『犬の雑穀ごはん』の発売以来、個人のお客様に加え、プライベートブランド(OEM生産)の依頼が急増しました。現在では、アニマル・ワン全売上の7割から8割をOEM生産が占めるほどになっています。生産工場の移転拡張を繰り返して製造体制を整備してきましたが、それでも生産が追い付かず、ここ2年以上もOEMの新規依頼は残念ながらお断りしています。『犬の雑穀ごはん』は、愛犬の主食であり、替えが効かない食事。欠品させるわけにはいかないのです。何よりも、今お使いいただいているお客様のもとに継続して商品をお届けすることを優先しているからです」。

2017年11月に熊本県玉名市に完成したアニマル・ワン商品専用の製造工場。商品の製造工程などがガラス越しに見られることから、将来的には、地域のこどもたちや希望する人に社会見学の機会を提供する予定。

 
今となっては信じられないことだが、アニマル・ワンは創業から10年間、赤字を計上し続けていたという。それでも創業者の内田さんは会社を畳もうとはしなかった。なぜなら、健康を第一に考えたペットフードの必要性、つまりアニマル・ワンという会社の存在意義を肌身で感じていたからだ。
菰方さんが社長に就任し女性チームで商品開発を手掛けるようになって、月間出荷数は37500個、在庫一切なしというペットフードメーカーへと大きく成長。ヒット商品は、創業者から受け継いだペットへの「想い」と安心安全への「こだわり」、そして女性ならではの「感性」から生まれたものだ。

ベストアメニティからアニマル・ワンに異動して6年目となるリーダーの海蔵寺さん(左)は、菰方さんのもとでアニマル・ワンの成長を見続けてきた。
「産休や育休で主力メンバーがしばらく抜けることもあり、女性スタッフだけの会社ならではの悩みもありますが、小さい会社だからこそ一つの業務にとらわれることはなく、どんな仕事にもチャレンジできる面白さがある」と菰方さん。

 
「少子高齢化でペット業界は縮小するとの予測もありますが、逆にペットを大切に飼う人が増え、プレミアムフードはまだまだ伸びていくと私は思います。その手ごたえも感じています」。菰方さんの声は力強さを増す。
製造体制の整備と拡張という課題はあるものの、2年前からは海外への輸出もスタート。『犬の雑穀ごはん』はまだまだ成長途上にあることは間違いない。
「人間同様、ペットの寿命も延びているため、今後はシニア対応のフードの品ぞろえを強化していきたいと考えています。無添加のこだわりはこれまでと同じく、より柔らかく食べやすい食感を追求したフードやペットの幸せにつながるごほうびおやつも開発したいですね」。

新商品を生み出すことはたやすいが、多くの人に認知されるまで育てることが難しい。しかし、生み出した以上は、とことん育てなければならないと菰方さんは言う。
「この会社に入って17年、継続し続けてきたからこそ今がある。これからもそれをつないでいきたい」。

創業者から受け取ったバトンを次の世代へ。菰方さんのチャレンジという名のバトンは、次なる若いメンバーへと引き継がれつつある。

 

提供:株式会社アニマル・ワン http://www.animal-one.co.jp/

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